waizuの観察記録や検証結果を公開しています

研究レポート2015‐③-♂の大顎を結束して行うペアリングについて-

これまで、ペアリングに関するレポートを2つ掲載しました。
一つは、♂を酷使した場合の産卵結果、もう一つは秋季にペアリングを行い持ち腹で越冬させた場合の翌春の産卵に関するものです。
昨年は、もうひとつペアリングに関する検討を行っていましたので、記録として残しておきます。
ペアリングの際に♂の大顎を縛った場合の影響についての考察です。

本来、オオクワガタは大人しい動物であり、若いペアを使ってペアリングを行った場合、トラブルは極めて少ないことが知られています。
しかし、高額な個体を購入して行う場合、万が一のことを恐れ、事故防止目的で大顎を結束したいとの心情が出てくることも事実です。
一方で、大顎を縛って行う場合、結束すること自体はそれほど手間ではありませんが、ペアリングの成功率に影響するのでは・・・との懸念を拭いきれずに来ました。
また、♂の大顎の結束が議論となった時、今でも賛否両論があり、各ブリーダーの考え方に委ねられているのが現状だと思います。
そこで今回は、駈け出しブリーダーの迷いに対する一つの意見として、私の考えを述べてみたいと思います。

【方法】
1.種親と結束方法
久留米11番♂86.5mmの大顎を縛り、2015年3月14日~5月18日の約2ヶ月間、結束を解除することなく8頭の♀に対しペアリングを実施し、採卵に失敗した場合は追加ペアリングを試みた。
尚、大顎の結束には100円ショップの結束バンドを使用し、以下のような状態で行った。
結束例200


2.ペアリング条件
産卵セットは、スタック中、エサ皿はラブハウス、エサはプロゼリー18g、マットはダニ駆除マット(オオクワキング製)で統一し、25℃の暗所にて実施した。

3.ペアリング期間とサイクル
ペアリング期間は3~6日、次ペアリングまでの期間は2~3コース連続させた後に休息期間を設けながら行った。

【結果】
○の中の数字はペアリング順、その次はペアリング日数、×は失敗・○は成功
※久留米ではブリード中止群も含まれるため、血統番号は表記せずアルファベットで分類

①A 5日間→×
②B 5日間→○
③C 3日間→×
④D 5日間→○
⑤E 4日間→○
⑥F 4日間→○
⑦G 5日間→○
⑧Aの再P 5日間→○
⑨Cの再P 4日間→○
⑩H 6日間→○

【考察】
8♀中6♀が1回目のペアリングで成功した。
これまで、その年度の初回ペアリング群や3日間以下のペアリング群で失敗率が高いことを経験しているため、そのことを考慮すると今回の成績は良好であり、最終的に8♀すべてから幼虫を獲得できたことからも、ペアリングの際に♂の大顎を縛ることがペアリング成功率に与える影響は少ないと思われる。

【まとめ】
ペアリングの際の大顎の結束は、採卵成功率に大きな影響を与えることなく、事故の発生率軽減に有効である。
オオクワガタのペアリングでは、♂が♀を挟み殺すことは稀であるが、現実に事故報告があることを考慮すると、より安全な方法を選択することが望ましい。
また、事故への不安が減少すれば、充分なペアリング期間の確保が可能となり、成功率アップも期待できる。
最終的に大顎の結束を行うかどうかは、各ブリーダーの判断となるが、貴重な個体からの採卵を安全かつ確実に成功に導くという観点からみれば、その有用性は高いと考えられる。
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[ 2015/08/19 12:31 ] 自由研究 | TB(-) | CM(11)

研究レポート2015-②-秋季ペアリングに関する考察-

昨日のブログで、秋ペアリングに関しても触れたところ、反響があります。
年内の産卵や持ち腹で来期を迎えようと計画されている方もいらっしゃるのでしょう・・・。
そこで、補足としてもう少し、昨日のデータについて触れておきます。
昨日公開したものが下記です。
◇2014年秋
⑩WN24番 5日間→○
⑪WN25番 6日間→×(翌春の再Pで○)
⑫WN26番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑬WN27番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑭WN28番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑮WN29番 6日間→×(翌春の再Pで×)
⑯WN30番 5日間→○

これをペアリング順に並び替えると共に、♀の羽化日、ペアリング期間を追記してみると次のようになります。
以下、ペアリング順、分類番号、羽化時期、P期間、成熟期間です。
① 26番♀、3月上旬、09/16~21、約6ヶ月
② 28番♀、4月上旬、09/24~29、約5.5ヶ月
③ 30番♀、5月中旬、10/02~07、約4.5ヶ月(成功)
④ 25番♀、5月下旬、10/10~16、約4.5ヶ月
⑤ 24番♀、5月下旬、10/17~22、約5ヶ月(成功)
⑥ 27番♀、5月下旬、10/27~11/01、約5ヶ月
⑦ 29番♀、5月下旬、11/02~08、約5.5ヶ月

このように羽化からペアリング開始までの期間もペアリング日数もある程度統一して臨みましたが、結果は初回ペアリングで28.6%(7例中2例)の幼虫確保に終わりました。
翌年の再ペアリングで、失敗した5例中4例で成功しましたが、原因をどこにあるのかわかりません。
ちなみに、翌春の初回産卵セットでは、上記7ラインのすべてで、産卵木がかじられ、産卵痕も多数確認できました。
ところが、失敗した5例はすべて空砲の嵐という結果に終わっています。
♀が未成熟だったのでしょうか?
早い♀では3ヶ月で産卵に成功することもありますが、個体差があることも事実です。
しかし、5ヶ月前後もあれば高い確率で成熟していると思われるのですが・・・。
また、これまでの経験で、未熟な♀と成熟した♂を同居させた後に♀を産卵環境下においても産卵行動は起こしません。
そう考えると、♀は成熟し交尾行動も起こしていたと考えるのが妥当です。
監視下ペアリングの経験を加味して考えても、交尾行動によって産卵行動が誘発されると思われますが、産卵行動=産卵ではないことを嫌というほど経験してきましたし、産卵しても孵化しない現象にもたくさん遭遇してきました。
一方、孵化しない無精卵と思われる状況であっても、追加ペアリングでアッサリと幼虫ゲットにつながることもしばしばです。
監視下ペアリングで複数回の交尾行動や長時間の交尾行動をいくら確認しても圧倒的に失敗例の方が多い現実を知って以来、オオクワガタにおける交尾➡卵誘発➡受精➡産卵のメカニズムが???状態です。
もっと、昆虫に関する論文を読んで勉強すれば答えに近づけるのでしょうが、勉強不足です(^▽^;)
私は、監視下ペアリングの実験以来、マニュアル的飼育法に記載されている「エサ皿の下で仲良く並んでいれば交尾成立の可能性が高い」「メイトガードを確認できれば相性に問題はなく掛かる可能性が高い」などの表現は正しいとは言えないと思っています。
上記の場合は、「交尾行動を行っている可能性は高い」となら言ってもよいと思いますが・・・。
昆虫は一般的に、♀の精嚢に精子がプールされ、産卵時に受精させて産み付けると言われています。
そうであれば、無精卵の現象は精子がうまくプールできなかったのであろうと想像できます。
では、空砲という現象は、どのような時に起きるのでしょう?
産卵行動は起こすけれども卵が生産されない状況って・・・???
受精卵が材に生み付けられるまでの道のりは単純ではなさそうです。

以上が、私の頭の中です(笑)
このように考えているからこそ、昨秋のペアリングの失敗が???なのです。
[ 2015/08/04 17:18 ] 自由研究 | TB(-) | CM(6)

研究レポート2015‐① ペアリングで酷使した♂の1例

夏休みと言えば自由研究!
当ブログの真骨頂も観察やデータを基にした自由研究です。
今回は、過酷なペアリングを実施した♂の1例を紹介します。
初の試みとして、アカデミックな形式で記載してみます^^;

研究レポート2015‐①
【タイトル】ペアリングで酷使した♂の1例-29クールのペアリングを経験して-

【緒言】
ペアリングに際しては、厳選された♂が種親として使用され、厳選された複数の♀へのペアリングが計画される。その際に問題となるのがペアリング件数で、期待する♂を多用したい心情とは逆に、♂の体力、寿命への影響を懸念し、ペアリング件数や日数をセーブする傾向がみられる。
しかし、♂を酷使した場合の報告は少なく、ペアリング回数の増加が生体寿命やブリード成功率に与える影響は明らかにされていない。
そこで今回、1♂に対して18頭の♀を交配し、のべ29回のペアリングを実施して詳細な経過観察を行い、寿命に与える影響、ペアリングの成功率、ペアリングに必要と思われる日数について検討したので報告する。

【方法】
1.種親
ブリード2014と2015においてサイズおよびフォルムから最も期待した能勢10番♂86.7mmに対し、2年間で18頭の♀を交配し、採卵に失敗した場合は、必要に応じて追加ペアリングを実施し、計29クールのペアリングを行った。
ペアリング期間は、2014年春(2014.3.12~5.15)、2014年秋(2014.9.15~11.8)、2015年春(2015.3.14~6.8)の3シーズンであった。

2.ペアリング条件
産卵セットは、スタック中、エサ皿はラブハウス、エサはプロゼリー18g、マットはダニ駆除マット(オオクワキング製)で統一し、ペアリング事故防止のための♂親の大顎の結束は行わず、25℃の暗所にて行った。

3.ペアリング期間とサイクル
実験の目的が、多頭数の♀とペアリングさせた場合の♂寿命と産卵成功率の確認であったため、ペアリング期間、次ペアリングまでの休息期間は敢えて統一せずにランダムとし、期間やサイクルが及ぼす成功率への影響も検討した。

【結果】
以下、血統分類番号とペアリング期間、成功の可否を記載(○は幼虫を確認)
※○の中の数字はペアリング順ではく♀の分類番号を示す

◇2014年春
①WN15番 5日間→○
②WN16番 5日間→○
③WN17番 4日間→○
④WN19番 5日間→○
⑤WN20番 3日間→× 再P5日間→○
⑥エバクワ氏に種付1 6日間→○
⑦エバクワ氏に種付2 6日間→○
⑧WN9番56.4mm 3日間→× 再P4日間→× 再々P4日間→×
⑨WN5番53.8mm 3日間→×

以上、9♀と12クール実施。同居日数53日。

◇2014年秋
この年は、春に♂を酷使したことで翌年のペアリングまでの生存を危惧し持ち腹での越冬作戦を実施
⑩WN24番 5日間→○
⑪WN25番 6日間→×(翌春の再Pで○)
⑫WN26番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑬WN27番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑭WN28番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑮WN29番 6日間→×(翌春の再Pで×)
⑯WN30番 5日間→○

以上、7♀と7クール実施。同居日数37日

◇2015年春
①WN15番2年目 3日間→○
⑤WN20番2年目 3日間→○
⑪WN25番再P  5日間→○
⑫WN26番再P  4日間→○
⑬WN27番再P  7日間→○
⑭WN28番再P  7日間→○
⑮WN29番再P  4日間→×欠番
⑰nolo氏予備♀  5日間→×
⑱hizo氏早期♀  5日間→× 再P7日間→×

以上、9♀と10クール実施。同居日数50日

【考察】
3シーズンをまとめると、18頭の♀と29クールのペアリングを実施し、♀と同居させた日数は、15ヶ月間で140日にも上ることがわかった。
これは、冬眠期間の3ヶ月を除けば、活動期間の4割弱を♀と過ごしたことになる。
この♂は、本原稿を書いている2015年8月2日現在も元気に活動しており、2013年5月中旬の羽化から2年3ヶ月が経過しようとしている。
この1例だけで結論は出せないが、ペアリングで酷使することが、すぐに寿命の短縮に直結しない可能性が示唆された。

本日の記録は、わかりやすいように血統順に配列を変え、ペアリング順とはなっていないが、元データを見る限り後半になるほど成功率が低下するような傾向はみられていない。

一方、休息期間と成功率に関しては、ペアリング期間が統一されていないため、信憑性に欠けるものとなったが、産卵能力のある♀であれば、概ね4~5日のペアリング期間を設ければ高い確率で成功すると思われるため、今後の報告とさせて頂く。

気になる点として、5日以上のペアリングを実施したにもかかわらず、持ち腹での越冬を試みた秋ペアリングの成功率低迷がある。
これらの♀はすべて羽化後5ヶ月以上が経過していため未成熟とは考えにくく、体内時計の影響も一因としては考えられるが、原因は不明である。

尚、今回のデータから採卵成功率を求めると、18頭の♀で13頭から幼虫を確保できており、成功率は72.2%となり、1目回のペアリングでの成功に限れば10頭となりるため、初回成功率は55.6%であった。
この成功率は、血統間による個体差の影響を受けると考えられるが、今後の課題として、上記成功率を高め効率性の向上を図りたい。
そのためには、ペアリング期間の見直しだけでなく、ペアリング環境にも検討の余地があると思われる。
特にエサ皿の厚み、エサ皿とケースのサイズ比などは、行動観察を行う中で必ずしも適正とは思えないため、今後は理想的なペアリング環境についても検討してみたい。

こんな感じでいかがでしょう?
今後の取り組みを評価する指標として、本日のデータを公開し記録として残しておきます。
次回は、久留米♂を使ったペアリング報告第2報を予定しています。

最後に確認させて頂きますが、今回の報告は、1♂のペアリングの可能性を検討したもので、このように1♂を多用することを推奨するものではありません。
将来の血統構成を考えた場合、多種多様な組み合わせを実施し、バリエーションを確保しておくことが重要です。
また、1♂を多用し種親としてハズレであった場合は、目も当てられません。
以上、よろしくお願い致します。
[ 2015/08/03 07:45 ] 自由研究 | TB(-) | CM(8)
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