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研究レポート2015‐① ペアリングで酷使した♂の1例

夏休みと言えば自由研究!
当ブログの真骨頂も観察やデータを基にした自由研究です。
今回は、過酷なペアリングを実施した♂の1例を紹介します。
初の試みとして、アカデミックな形式で記載してみます^^;

研究レポート2015‐①
【タイトル】ペアリングで酷使した♂の1例-29クールのペアリングを経験して-

【緒言】
ペアリングに際しては、厳選された♂が種親として使用され、厳選された複数の♀へのペアリングが計画される。その際に問題となるのがペアリング件数で、期待する♂を多用したい心情とは逆に、♂の体力、寿命への影響を懸念し、ペアリング件数や日数をセーブする傾向がみられる。
しかし、♂を酷使した場合の報告は少なく、ペアリング回数の増加が生体寿命やブリード成功率に与える影響は明らかにされていない。
そこで今回、1♂に対して18頭の♀を交配し、のべ29回のペアリングを実施して詳細な経過観察を行い、寿命に与える影響、ペアリングの成功率、ペアリングに必要と思われる日数について検討したので報告する。

【方法】
1.種親
ブリード2014と2015においてサイズおよびフォルムから最も期待した能勢10番♂86.7mmに対し、2年間で18頭の♀を交配し、採卵に失敗した場合は、必要に応じて追加ペアリングを実施し、計29クールのペアリングを行った。
ペアリング期間は、2014年春(2014.3.12~5.15)、2014年秋(2014.9.15~11.8)、2015年春(2015.3.14~6.8)の3シーズンであった。

2.ペアリング条件
産卵セットは、スタック中、エサ皿はラブハウス、エサはプロゼリー18g、マットはダニ駆除マット(オオクワキング製)で統一し、ペアリング事故防止のための♂親の大顎の結束は行わず、25℃の暗所にて行った。

3.ペアリング期間とサイクル
実験の目的が、多頭数の♀とペアリングさせた場合の♂寿命と産卵成功率の確認であったため、ペアリング期間、次ペアリングまでの休息期間は敢えて統一せずにランダムとし、期間やサイクルが及ぼす成功率への影響も検討した。

【結果】
以下、血統分類番号とペアリング期間、成功の可否を記載(○は幼虫を確認)
※○の中の数字はペアリング順ではく♀の分類番号を示す

◇2014年春
①WN15番 5日間→○
②WN16番 5日間→○
③WN17番 4日間→○
④WN19番 5日間→○
⑤WN20番 3日間→× 再P5日間→○
⑥エバクワ氏に種付1 6日間→○
⑦エバクワ氏に種付2 6日間→○
⑧WN9番56.4mm 3日間→× 再P4日間→× 再々P4日間→×
⑨WN5番53.8mm 3日間→×

以上、9♀と12クール実施。同居日数53日。

◇2014年秋
この年は、春に♂を酷使したことで翌年のペアリングまでの生存を危惧し持ち腹での越冬作戦を実施
⑩WN24番 5日間→○
⑪WN25番 6日間→×(翌春の再Pで○)
⑫WN26番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑬WN27番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑭WN28番 5日間→×(翌春の再Pで○)
⑮WN29番 6日間→×(翌春の再Pで×)
⑯WN30番 5日間→○

以上、7♀と7クール実施。同居日数37日

◇2015年春
①WN15番2年目 3日間→○
⑤WN20番2年目 3日間→○
⑪WN25番再P  5日間→○
⑫WN26番再P  4日間→○
⑬WN27番再P  7日間→○
⑭WN28番再P  7日間→○
⑮WN29番再P  4日間→×欠番
⑰nolo氏予備♀  5日間→×
⑱hizo氏早期♀  5日間→× 再P7日間→×

以上、9♀と10クール実施。同居日数50日

【考察】
3シーズンをまとめると、18頭の♀と29クールのペアリングを実施し、♀と同居させた日数は、15ヶ月間で140日にも上ることがわかった。
これは、冬眠期間の3ヶ月を除けば、活動期間の4割弱を♀と過ごしたことになる。
この♂は、本原稿を書いている2015年8月2日現在も元気に活動しており、2013年5月中旬の羽化から2年3ヶ月が経過しようとしている。
この1例だけで結論は出せないが、ペアリングで酷使することが、すぐに寿命の短縮に直結しない可能性が示唆された。

本日の記録は、わかりやすいように血統順に配列を変え、ペアリング順とはなっていないが、元データを見る限り後半になるほど成功率が低下するような傾向はみられていない。

一方、休息期間と成功率に関しては、ペアリング期間が統一されていないため、信憑性に欠けるものとなったが、産卵能力のある♀であれば、概ね4~5日のペアリング期間を設ければ高い確率で成功すると思われるため、今後の報告とさせて頂く。

気になる点として、5日以上のペアリングを実施したにもかかわらず、持ち腹での越冬を試みた秋ペアリングの成功率低迷がある。
これらの♀はすべて羽化後5ヶ月以上が経過していため未成熟とは考えにくく、体内時計の影響も一因としては考えられるが、原因は不明である。

尚、今回のデータから採卵成功率を求めると、18頭の♀で13頭から幼虫を確保できており、成功率は72.2%となり、1目回のペアリングでの成功に限れば10頭となりるため、初回成功率は55.6%であった。
この成功率は、血統間による個体差の影響を受けると考えられるが、今後の課題として、上記成功率を高め効率性の向上を図りたい。
そのためには、ペアリング期間の見直しだけでなく、ペアリング環境にも検討の余地があると思われる。
特にエサ皿の厚み、エサ皿とケースのサイズ比などは、行動観察を行う中で必ずしも適正とは思えないため、今後は理想的なペアリング環境についても検討してみたい。

こんな感じでいかがでしょう?
今後の取り組みを評価する指標として、本日のデータを公開し記録として残しておきます。
次回は、久留米♂を使ったペアリング報告第2報を予定しています。

最後に確認させて頂きますが、今回の報告は、1♂のペアリングの可能性を検討したもので、このように1♂を多用することを推奨するものではありません。
将来の血統構成を考えた場合、多種多様な組み合わせを実施し、バリエーションを確保しておくことが重要です。
また、1♂を多用し種親としてハズレであった場合は、目も当てられません。
以上、よろしくお願い致します。
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[ 2015/08/03 07:45 ] 自由研究 | TB(-) | CM(8)
こんにちは
愛媛県の大鍬悶左衛門と申します。貴重なご発表ありがとうございます。

2点ご質問いたします。
1点目は秋ペアリングの不成功の要因について原因不明とのことですが、Waizuさんの推測されるところがあればご教示ください。
2点目はペアリング環境についてですが、現時点でWaizuさんが想定される理想的な環境について、特に重要とお考えの部分があれば、支障がなければご教示ください。
[ 2015/08/03 12:07 ] [ 編集 ]
こんにちは
また興味深い検証報告有難うございます。
当方も2012-1番 84.6mmを2年間に渡って17♀とペアリングさせました
初年度は7♀とペアリングし6♀成功
失敗した♀は羽化後2年経過した♀でした。
今年は10♀とペアリングし全て成功しました。
ペアリング期間は全て休憩無しの7日です。
ただ♂は最後のペアリングから5日程で★となりました。
驚く事に今年最後の2♀とのペアリングは弱々しく交尾は無理かとおもいましたが無事産卵成功しております。

ペアリング後に★となり可哀想な事をしたと思いますが優秀な子孫を残してくれる事と信じ大事に累代したいと思っています。
[ 2015/08/03 15:22 ] [ 編集 ]
こんばんは♪
とても貴重なデータを開示いただき、ありがとうございました。

今回のレポートを執筆されるまでに、どれほどの時間と労力を費やされたのか!
詳細なデータを取ることは、簡単には出来ませんから本当に素晴らしい内容であると思います。

やはり気になった点は、2014年秋の成功率の低さです。
たまたま数日前から、個体の成熟期間に関して興味があり、2006年9月27日のwaizuさんの記事を見つけ何度も読み返しておりました。
失礼ながら、リンクを表示させていただきます。

http://waizudorcus.blog.fc2.com/blog-entry-82.html

こちらの記事にあるように、成熟期間は、温度環境や個体差によって差異が生じるということで、♀が成熟していなかったのではないかと想像していますが、真相はどうでしょうかね^^;
[ 2015/08/03 19:36 ] [ 編集 ]
こんばんは。
凄い!

やはり秋のペアリングの成績が気になりますね。
♂♀どちらに問題があったのでしょう?
時系列に並べても傾向は見えないんですよね?
[ 2015/08/03 23:00 ] [ 編集 ]
Re: こんにちは
大鍬悶左衛門さん、おはようございます。

いま、自宅でパソコンが使えないため、レスは職場で時間のある時だけにしています。

> 愛媛県の大鍬悶左衛門と申します。貴重なご発表ありがとうございます。
いまさら、自己紹介頂かなくてもよく存じております(笑)

> 1点目は秋ペアリングの不成功の要因について原因不明とのことですが、Waizuさんの推測されるところがあればご教示ください。
♀が未成熟だったかどちらかがその気でなかったのでは・・・?
どちらもパッとしないので、原因不明と思っているのです(笑)

> 2点目はペアリング環境についてですが、現時点でWaizuさんが想定される理想的な環境について、特に重要とお考えの部分があれば、支障がなければご教示ください。

♀が摂食中に♂が交尾行動を取りやすいエサ場の設定です。
エサ皿は薄くかもしくはなだらかな面で、マット面との障害が少ないこと。
そして、飼育ケースも円形が理想ではと考えています。
[ 2015/08/04 08:16 ] [ 編集 ]
Re: こんにちは
クマモンさん、おはようございます。

そちらでも多数のペアリング計画を実行されたようですねっ!
その♂は、可哀想というよりむしろ充実した生涯だったのではないでしょうか?
オオクワガタは洞でジッとして過ごし、タイミングを見計らって、餌場での出会いを求めて生きているのですから・・・。

それにしましても、死亡する5日前までのペアリングで子孫を残せるとは興味深い結果です。
[ 2015/08/04 08:27 ] [ 編集 ]
Re: こんばんは♪
桑名鷹さん、おはようございます。

データは大学ノートに走り書きですが、こまめに記録だけは残すようにしています。
たまたま日曜日に時間が取れたので、整理して書いてみました。
データの整理は1時間少々でできましたが、わかりやすい文章にすることにちょっと時間がかかってしまいましたね(^▽^;)

> こちらの記事にあるように、成熟期間は、温度環境や個体差によって差異が生じるということで、♀が成熟していなかったのではないかと想像していますが、真相はどうでしょうかね^^;

その可能性は十分ですが、5ヶ月程度経過してこの確率なのがちょっと・・・・
[ 2015/08/04 08:32 ] [ 編集 ]
Re: こんばんは。
dapさん、おはようございます。

> ♂♀どちらに問題があったのでしょう?
> 時系列に並べても傾向は見えないんですよね?

♂は順調に使っていたいので、普通に考えれば♀だと思います。
もう、仕事しないとっ!(^▽^;)
[ 2015/08/04 08:33 ] [ 編集 ]
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